診断のポイント
【1】2か所以上の肋骨・肋軟骨骨折が上下に連続して複数本存在し,胸壁が吸気時に陥没し,呼吸時に膨隆する奇異な胸郭運動を認める。
【2】奇異性の運動は,自発吸気時の胸腔内陰圧によって生じるため,陽圧換気下では消失する。
【3】肺挫傷を伴うことが多い。
【4】胸骨骨折を伴うこともある。
症候の診かた
【1】低酸素血症:骨折によって正常な胸郭と連続性が失われた部分をフレイルセグメントというが,胸郭の不安定自体が換気および呼吸不全に直結することは少ない。フレイルセグメントが背部の際に(複数箇所の肋骨骨折が背部の場合に),仰臥位の患者では奇異性運動を通常認めない。フレイルセグメントが生じるような外力で発生した肺挫傷の合併がガス交換能を低下させて,低酸素血症を発生させていることも多い。
【2】換気不全:疼痛による1回換気量の減少と,気道内貯留物の排泄が障害されることにより,換気不全を生じる。