診断のポイント
まず大動脈解離を想定することが重要である。冬季に多く発生する。近年は高齢者例が多いが,若年者ではMarfan症候群などの血管脆弱性を示す遺伝疾患に留意する必要がある。
【1】胸背部の突然の激痛。
【2】痛みの移動:胸部から腰背部に移動する。
【3】灌流障害による多彩な症状:胸部絞扼痛(心筋梗塞),意識障害・麻痺(脳梗塞),下肢麻痺(脊髄梗塞),腹痛(腸管壊死),尿量減少(腎不全),下肢痛(下肢虚血)。
【4】解離の進展に伴い症状が変化・軽快する。
【5】失神。
緊急対応の判断基準
すべての急性大動脈解離は救急対応を必要とする。
【1】上行大動脈への解離進展:大動脈解離は解離が上行大動脈に及ぶStanford A型解離(A型解離)と,弓部下行大動脈以下にとどまるStanford B型解離(B型解離)に大別される。
❶A型解離
■心膜翻転部内にある上行大動脈に解離が及ぶと心タンポナーデを発症し,