急性心筋梗塞症をはじめとする循環器急性疾患の診断において,まず重要なことは問診である.的確な問診を手早く行い,見逃した場合には致命的となる疾患を確実に視野に入れつつ鑑別疾患をあげ,直ちに結果の得られる検査から進め,通常は治療開始と同時に疾患を絞り込んでいくのである.決してすべての検査の結果がでてからゆっくり考えるものではない.このため,問診および身体所見でどれだけ疾患を絞り込めるかが腕のみせどころとなる.また慢性期の管理においても,問診こそが病状の変化をとらえる最大の武器となるのである.
Ⅰ.問診
まず,主訴とともにバイタルサインを確認する.
冷や汗をうかべているようなら,急性心筋梗塞,大動脈解離,血栓塞栓症,結石などによる急性閉塞などの救急疾患である.即座に治療を開始すること.モルヒネなどでしか疼痛がおさまらないようであれば,上記診断にほぼ確定である.
次に,現病歴,既往歴,使用薬剤,生