急性心筋梗塞症をはじめとする循環器急性疾患の診断において,まず重要なことは問診である.的確な問診を手早く行い,見逃した場合には致命的となる疾患を確実に視野に入れつつ鑑別疾患をあげ,直ちに結果の得られる検査から進め,通常は治療開始と同時に疾患を絞り込んでいくのである.決してすべての検査の結果がでてからゆっくり考えるものではない.このため,問診および身体所見でどれだけ疾患を絞り込めるかが腕のみせどころとなる.また慢性期の管理においても,問診こそが病状の変化をとらえる最大の武器となるのである.
Ⅰ.問診
まず,主訴とともにバイタルサインを確認する.
冷や汗をうかべているようなら,急性心筋梗塞,大動脈解離,血栓塞栓症,結石などによる急性閉塞などの救急疾患である.即座に治療を開始すること.モルヒネなどでしか疼痛がおさまらないようであれば,上記診断にほぼ確定である.
次に,現病歴,既往歴,使用薬剤,生活習慣,家族歴を端的に聞く.
胸痛については初発時期,部位,強度,放散の有無,持続時間,発作の起こる時間帯および状況や誘因(たとえば早朝の安静時,朝の通勤時など)を聞く.特に労作の強度との関係および再現性や狭心症の場合には,ニトロ製剤の有効性(直ちに効くかどうか)が重要である.また発作の強度,頻度の増強や安静時出現などが変化していないかどうかは,即時入院の適応と関連するので特に重要である(表17図).
狭心症症状の特徴を以下にあげる.
①胸骨下(または頸部,顎,肩,腕)の絞扼感または締め付けられるような痛み
②運動や精神的ストレスによる増悪
③安静もしくはニトログリセリンによる5分以内の症状緩和
典型的狭心症は上記の3つの性状をすべて満たし,非典型的狭心症は2つのみを満たす場合である.特定の性状の(中心部の,圧迫されるような,つかまれるような)胸痛があれば高い確率で心筋虚血由来である.
息切れ,