病態
多様な原因(敗血症,多臓器性外傷,急性膵炎,誤嚥性肺炎など)から発症する,肺血管内皮細胞傷害による透過性亢進型(非心原性)肺水腫を伴う急性呼吸不全である.急性肺傷害(ALI)という用語は使用されなくなった.2012年に提唱された診断基準(Berlin定義)によれば,①臨床的誘因や呼吸症状の発現・増悪から7日以内の急性発症であり,②胸部画像で両側の透過性低下があり,これが胸水,無気肺,結節性病変の存在では説明できず,③肺水腫の原因が心不全や輸液過剰ではないと考えられる場合である.このとき,リスクファクターがない場合は静水圧性肺水腫を除外するために客観的評価(心エコーなど)を要する.そして,④酸素化〔PaO2/FiO2(以下,P/F)〕の程度により,ARDSをmild(軽症), moderate(中等度),severe(重症)に分類する.
・mild:200<P/F≦300,PEEPおよびCPAP≧5cmH2O
・moderate:100<P/F≦200,PEEP≧5cmH2O
・severe:P/F≦100,PEEP≧5cmH2O
[参考]
ARDS診療ガイドライン 2021
異常値
・動脈血ガス分析 上記ARDSの分類を参照
・胸部X線 初期には胸部X線に異常を認める前から低酸素血症が出現することがある.典型的には両側びまん性浸潤陰影(両側透過性低下)
・心電図・心エコー 急性心筋梗塞などによる心原性肺水腫を除外.心エコー検査にて静水圧性肺水腫の除外
・血算・血液像 発熱などと併せて,白血球数増加,左方移動,CRP上昇など細菌感染を示唆する所見に注意.一方,血小板数減少や貧血はDICの合併を示唆する
・凝固・線溶機能検査 DICを示唆する所見の有無
・生化学検査 著明な低酸素血症により肝逸脱酵素(LD,AST,ALT)の上昇を生じる
・細菌学的検査 細菌感染を示唆する所見があれば,喀痰,血液