診療支援
検査

胸水貯留あるいは胸水
海老原 明典
(東海大学医学部付属東京病院教授・呼吸器内科)

病態

 胸水の鑑別診断と病態に応じた管理・治療が重要である.一般的には滲出性(exudative)と漏出性(transudative)に分類したうえで,その原因疾患に応じた治療を行う.胸水の約90%は滲出性であり,ここでは主に胸膜炎に伴う胸水の臨床検査について述べる


異常値

・胸部X線 胸水の有無を確認.少量の胸水貯留が疑われる症例では側臥位正面像(DC view),超音波検査による確認が簡便かつ迅速.肺炎,肺癌,肺結核などの異常影,リンパ節腫大などを確認

・胸部CT 胸部X線所見の確認に加え,肺門・縦隔リンパ節腫大を検討

・胸水穿刺 胸水中のpH,細胞数,細胞分画,総蛋白,LD値,糖を測定.①胸水/血清比が総蛋白値で0.5以上,②LD値で0.6以上,③胸水LDが血清の基準値上限の2/3以上,のいずれか1つを満たせば滲出性.血性胸水ではヘマトクリット,明らかな乳び胸については中性脂肪を測定.膵炎や食道破裂に伴う胸水ではアミラーゼが高値.結核性ではアデノシンデアミナーゼ(ADA)が高値.関節リウマチ(RA)では糖が著明に低下する.抗核抗体(ANA)も測定すべきである.悪性胸膜中皮腫では,ヒアルロン酸高値が特徴

・胸水細菌学的検査 細菌学的検査をルーチンで提出.嫌気性培養,抗酸菌培養も施行.結核性ではPCR検査を併用すると検出率が向上する

・胸水細胞診 細胞診をルーチンで提出.癌性胸膜炎を疑う場合,3回は提出すべきである

・胸膜生検 胸水があればCope針を用いて胸膜を生検.結核性胸膜炎,癌性胸膜炎では診断的価値が高い

・胸腔鏡(VATS) 以上で診断を確定できない場合は,胸腔鏡による検索を施行.胸膜中皮腫では診断的意義が高い


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●胸部X線 胸腔ドレーンによるドレナージ管理の期間中は,ドレナージ量を確実に把握,週2回以上撮影.結核性胸膜炎では治療に伴う初期増悪を

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