病態
炎症に由来する胃粘膜の形態学的あるいは病理組織学的な変化が長期間持続する状態.ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染に由来する萎縮性胃炎は胃癌の発生リスクとなる
[参考]
胃炎の京都分類 改訂第2版,2018
異常値
・内視鏡 内視鏡による胃炎診断はH. pylori感染状態(未感染,現感染,既感染)と将来的な胃癌の発生リスクを評価するために行われる.わが国では,京都分類を用いることが多く,びまん発赤・白濁粘液・粘膜腫脹などがH. pylori現感染の胃粘膜に特徴的な所見である.H. pylori除菌後にはそれらの所見は消失し,腸上皮化生を起こした胃粘膜が地図状発赤として顕在化することがある.H. pylori感染状態が長期間維持されると萎縮粘膜が肛門側から口側に徐々に進展し,その範囲に応じて発癌リスクが上昇することが知られている
・H.pylori検査 尿素呼気試験,抗体検査,便中抗原がある.尿素呼気試験と便中抗原は体への負担が少なく,精度も高いが,胃酸分泌を抑制する抗潰瘍薬の影響により偽陰性となる可能性がある.抗体検査は抗潰瘍薬の影響を受けず,治療が成功した後も1年程度は陽性状態が持続することがある
・抗胃壁細胞抗体,抗内因子抗体 自己免疫性胃炎(A型胃炎)の判定で用いる
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●内視鏡 [慢性期]胃癌の早期発見のため1~2年に1回
診断・経過観察上のポイント
①H. pylori感染による胃炎に対して除菌治療が保険適用となっており,抗菌薬と抗潰瘍薬を組み合わせて用いる.新しい抗潰瘍薬であるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)の登場により除菌治療の成功率が飛躍的に向上した.②H. pylori除菌後も萎縮性変化は残存するので,できるだけ萎縮が広がる前の早い段階で治療するのが望ましい.③H.pylor