診療支援
検査

多発性骨髄腫(MM)
神田 善伸
(自治医科大学教授・内科学講座血液学部門)

病態

 免疫グロブリン産生細胞である形質細胞の悪性増殖を本態とし,骨髄腫細胞の増殖による症状に加えて,免疫グロブリンの増加による症状が発現する


[参考]

 造血器腫瘍診療ガイドライン第2版〔2018年版〕補訂版,2020


異常値

・赤沈 亢進.過半数が100mm/時以上

・血清蛋白電気泳動 幅の狭い急峻なピーク(M蛋白)を認める(BJ型では認めない)

・血清中M蛋白 増加(IgG>2g/dL,IgA>1g/dL)

・血清蛋白免疫電気泳動あるいは免疫固定法 M蛋白のクラスの判定

・正常免疫グロブリン 減少

・免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比 κ,λの乖離がみられる

・尿蛋白 陽性.過半数でBence Jones蛋白(BJP)を認める(BJPはテステープでは陰性になることがある)

・骨髄検査 骨髄形質細胞の増加(10%以上)

・骨X線 打ち抜き像(punched-out lesion),骨融解像,椎骨圧迫骨折

・BUN,クレアチニン 腎障害(骨髄腫腎)により増加


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●血清蛋白‍ [急性期]1週ごと [慢性期]2~4週ごと

●尿蛋白‍ [急性期]1週ごと [慢性期]1~2カ月ごと

●骨髄検査‍ [急性期]3~6カ月ごと [慢性期]6~12カ月ごと

●骨X線‍ [急性期]2~6カ月ごと [慢性期]6~12カ月ごと.痛みがある部位は適宜

●血液生化学‍ [急性期]週1~2回 [慢性期]4~8週ごと


診断・経過観察上のポイント

①40歳以上に好発し,主訴は貧血や腰痛などの疼痛が多い.②経過観察は,腫瘍の増殖,腎障害などを中心に最低1回/月検査する.③血清蛋白電気泳動でM蛋白を認め,正常免疫グロブリンが減少する所見が診断上重要である.④治療効果判定には,M蛋白やBJPが腫瘍量と相関しているので,これらの減少を基準とする.感度の高い検査として免疫固定法や遊離軽鎖分析なども行われている.


(神田 善伸

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