診療支援
検査

梅毒
平井 由児
(東京医科大学八王子医療センター感染症科教授)

病態

 細菌である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が原因となり,時間経緯により多彩な症状を呈する代表的な性感染症である


[参考]

 性感染症 診断・治療ガイドライン2020


異常値

●暗視野顕微鏡による鏡検 陰部や皮膚潰瘍の滲出物から梅毒トレポネーマを検出する.梅毒トレポネーマは菌体は全長10~13μmであるのに対し,幅0.15μmと細長く,らせん状の構造であり通常の顕微鏡での検出は困難である.パーカーインク染色後による光学顕微鏡鏡検法もあるが,いずれにせよ技術的なばらつきや,あくまでも形態的判断にとどまり,梅毒以外のトレポネーマとの区別が不可能という問題がある

●病理学検査 皮膚潰瘍や結節部位の皮膚生検より梅毒トレポネーマを検出する

●梅毒血清反応〔特異的トレポネーマ検査(TPHA,FTA-ABS)〕 梅毒トレポネーマに対する抗体を定量する検査であり,疾患特異性は高い反面,ほぼ生涯を通して陽性が持続し,活動性の有無にかかわらず梅毒の既往を判断できる.現在の病勢および治療効果の指標とならない.また感染早期では,後述する非トレポネーマ検査が陽性となった後2~3週間遅れてから陽性となるために偽陰性の期間が存在する

●梅毒血清〔非トレポネーマ検査(RPR,VDRL)〕 カルジオリピン・コレステロール・レシチン抗原に対する抗体価を示しており,治療効果判定や病勢の評価に用いられる.梅毒トレポネーマ感染から2週間前後で上昇し,加療に伴い低下する.非HIV患者の第1・2期梅毒では適切な治療開始から6カ月,12カ月経過した時点でRPRが診断時と比較して4倍以上なら再燃・再感染と考えられる.また,身体所見・臨床症状・梅毒罹患歴のないRPR陽性例は潜伏梅毒の可能性があり,HIVなどの基礎疾患やその他の性感染症,神経梅毒など合併症精査が必要である

●髄液検査(神経梅毒の場合) 神経梅毒は第

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