診療支援
検査

ウエストナイル熱(WNF)
北村 義浩
(日本医科大学医学教育センター個別化教育推進部門・部門長(特任教授))

病態

 ウエストナイルウイルス(WNV)を有する蚊に刺されることによって感染する人畜共通感染症である.突然の発熱,筋肉痛,疲労感,リンパ節腫脹を主徴とする


異常値

・抗体検査 WNVに特異的なIgM抗体を血清中に(神経学的症状を呈する場合,脳脊髄液にも)検出する.これが最も有用な情報である.発熱後8日頃から血清中に中和抗体(IgG)を検出しうる

・RT-PCR法による遺伝子検出 ウイルス核酸をRT-PCR法で血清中に(神経学的症状を呈する場合,脳脊髄液にも)検出する(第1~7病日)

・髄液検査 神経学的症状を呈する場合,脳脊髄液の所見は通常,細胞上昇,蛋白質上昇,グルコース正常,である.細胞はリンパ球優位である

・その他 神経学的所見のある場合に,低Na血症を示すことがある


経過観察のための検査項目とその測定頻度

 一般的な全身管理と脳炎の管理


診断・経過観察上のポイント

①80%が不顕性感染.WNF流行地域(アフリカ,ヨーロッパ,西アジア,米国)への旅行歴が診断上重要.温帯地域では夏季~初秋にかけて多発する.潜伏期は通常2~6日(2週間まではありうる).突然の発熱(38.5℃以上)で発症する.その後,ひどい頭痛,筋肉痛,食思不振などが出現する.しばしばリンパ節腫脹やかゆみのない発疹(斑状丘疹,体幹)が認められる.通常約1週間で回復する.②約1%のWNV感染者(顕性感染者の20~30人に1人)が,頭痛,高熱,麻痺,昏睡,痙攣などを症状とする脳炎を発症する.特に50歳以上は発症しやすい.③鑑別として日本脳炎,セントルイス脳炎をはじめとするウイルス性脳炎とGuillain-Barré症候群が重要.ヘルペスウイルス脳炎は最初に除外診断すべき.④感染症法で4類感染症とされているので,診断した場合届出をする.⑤脳炎患者の致死率は10%と高率である.糖尿病患者,高血圧患者,高齢者,慢性腎疾患患者,C型肝炎

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