診療支援
検査

マラリア
海老原 明典
(東海大学医学部付属東京病院教授・呼吸器内科)

病態

 マラリア原虫(Plasmodium)の感染により発症する.高熱,溶血,肝脾腫を呈する感染症である.赤血球で発育する虫体が一斉に分裂する際に周期的に熱発作を生じる疾患


[参考]

 寄生虫症薬物治療の手引き改訂(2020年)10.2版


異常値

・血算・血液像 血液塗抹標本のGiemsa染色により虫体を確認.寄生赤血球像は,三日熱,卵型マラリアでSchüffner斑点,熱帯熱マラリアでMaurer斑点.初診時に中等度以上の貧血を示す症例は重症例.血小板数減少はDICを示唆する.白血球数は通常基準範囲

・凝固・線溶機能検査 重篤な熱帯熱マラリアではDICを合併する

・血糖値 重篤な熱帯熱マラリアでは低血糖(40mg/dL未満)

・動脈血ガス分析 重篤な熱帯熱マラリアでは乳酸アシドーシスを合併.まれに致死的な急性呼吸促迫症候群(ARDS)を合併

・生化学検査 LD上昇,ビリルビン上昇など溶血に伴う所見.重篤な熱帯熱マラリアでは,AST,ALT上昇,ヘモグロビン尿やDICに伴う急性腎不全を合併


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●血算・血液像 重篤な熱帯熱マラリアは12時間ごとに血算を測定して必要により輸血.治療期間は1~2週間程度であるが,この期間は頻回に血算・血液像を観察

●生化学検査 重篤な熱帯熱マラリアの急性期には,腎機能を連日検索


診断・経過観察上のポイント

①マラリアの熱発作の周期は三日熱マラリア(Plasmodium vivax),卵型マラリア(P. ovale)では48時間,四日熱マラリア(P. malariae)では72時間,最も重篤な熱帯熱マラリア(P. falciparum)では不規則である.発作を繰り返して溶血,肝脾腫を生じるが,急性腎不全,中枢神経疾患を合併して致死的となる.②潜伏期間は10~14日間程度である.③マラリア,特に熱帯熱マラリアの治療は一刻を争う.国際化によっ

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