A.ER診療のポイント
感覚障害でERを訪れた患者の初期診療には,先ず緊急度の高い疾患を除外し,その後に神経学に忠実な診療を行う.確定診断に至らずとも感覚障害のレベルや種類を知ることが病態の把握につながる.
1バイタルサイン・意識レベルに関わる感覚障害の鑑別
●脳卒中における感覚障害の発症頻度は運動麻痺に比べて低く,Japan Stroke Standard Registry Study(JSSRS)は最も多いラクナ梗塞でも19.5%であったと報告している.しかし突然発症した感覚障害では,常に脳卒中を鑑別に挙げる必要がある.
●感覚障害を呈する病態の中で,急性冠症候群と大動脈解離は最も緊急性が高い.典型的な前胸部や胸背部の自発痛ではなく,同部位の違和感など非典型的な異常感覚や大動脈解離では前脊髄動脈閉塞による下半身の感覚低下でERを受診する患者も存在するため鑑別を要する.
●中毒にも感覚障害を初期症状とする危険な病態が存在する.
2安定していても生命予後・機能予後に影響する感覚障害の鑑別
●緊急性は高くなくとも見逃しにより重大な結果を招く疾患が存在する.痙攣発作の前兆としての感覚障害である場合には,帰宅後発作を生じて生命に危険を生じる可能性も存在する.
●脊髄疾患で,虚血によるものの頻度は少ないが,感覚解離や皮膚分節に沿った感覚障害が突然生じたら鑑別を要する.外傷では,頸椎症に軽度の外力で生じる頸髄損傷に注意が必要である.
●外傷では圧挫症候群,コンパートメント症候群における感覚障害に注意が必要である.
3問診と詳細な神経学的診察
●感覚障害は自覚症状であるため,病歴と本人の訴えが頼りである.フグの生食などによる口唇・舌のしびれや,精神疾患や過換気症候群での感覚障害など,問診により鑑別が可能な場合も多い.
●「しびれ」を訴える患者については,感覚低下,感覚過敏,異常感覚,脱力などのうちで何を意味
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