診療支援
治療

頭痛
headache
安田冬彦
(洛和会音羽病院・京都ER救急救命センター部長)

A.ER診療のポイント

●頭痛を訴えてERを受診する患者は全患者の約3%に及ぶ.頭痛で受診する患者は,放置しておくと重篤な状態になるのではないかという不安を抱いている場合と,とにかく痛みを何とかしてほしいと願って受診する場合の2つに集約される.

●国際頭痛学会の頭痛分類は,一次性頭痛(機能性頭痛)と二次性頭痛(症候性頭痛)に分けている.二次性頭痛の中で重症度の高い疾患としては,くも膜下出血(SAH),頭蓋内出血,虚血性脳血管障害,動脈解離,髄膜炎・脳炎,脳膿瘍,慢性硬膜下血腫,脳静脈洞血栓症,側頭動脈炎,特発性頭蓋内圧亢進症などがあり,初期診療医はこれらの疾患の中で優先順位をつけながら診療を進めていく.

●ER医は診断がついてから,その患者の病態を最適な状態に維持し,専門的な治療へ円滑に移行できるよう管理しなければならない.

 以上のことから頭痛診療のERのポイントは,①重症度の高い疾患を見逃さないこと,②初期診療が終了するまで患者の病態を最適に維持すること,③的確な問診に基づく鎮痛処置である.


B.最初の処置

 頭痛の診療では,二次性頭痛を見落とさないことに意識を集中するあまり,事細かに病歴聴取を行っていると,診療途中に痙攣を起こしたり,最悪の場合,心停止に陥ることすらある.正確な診断よりも,まず最悪のシナリオを常に意識して行動できるように心掛ける.

1救急車で来院した患者

①救急車で搬送された患者の場合には,救急車から降車させER内へ搬送する間に救急隊から病状・病歴を聴取する.

②患者に呼びかけて,バイタルサイン(血圧,心電図モニター,酸素飽和度,体温,呼吸数)を確認しつつ,意識レベル,呼吸状態,四肢の脱力の有無,瞳孔の左右差などを観察し,呼吸の補助が必要かを判断する.

③次に,簡潔な問診を行い,精査が必要と判断すれば,問診を切り上げて静脈ライン,採血指示を行い(その際には発熱や感染などの

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