Ⅰ.下痢
A.ER診療のポイント
●定義上は「成人が1日に200mL/日を超えるまたは3回/日以上の排便」とされるが,通常腹痛を伴って複数回水分の多い排便をした場合に患者が受診する.
●結果として,脱水,電解質失調を伴うことがあるので注意が必要である.特に高齢者では循環障害を生じて血圧低下や意識障害を呈している場合もある.
●急性発症なのか慢性経過の病態かを問診して,原因疾患の鑑別をする.
●感染性の病態か非感染性かの判別を意識する.感染性では発熱を伴うことが多い.
●便の性状,特に血液の混入の有無に注意する.
●食中毒は食品衛生法や感染症法上の届け出疾患のことがあるので,数日前からの食物摂取歴を問診する.
●海外からの輸入感染症であることを考え,海外渡航歴を問診する.
B.最初の処置
1バイタルサインや簡便な生理学的評価
高度の脱水によって呼吸・循環障害が生じている場合には,基本的な処置として酸素投与と静脈路確保の上,点滴を開始する.
2病歴
①症状の経過⇒慢性疾患か急性疾患か
②腹痛を伴うか,発熱を伴うか⇒炎症性,感染性腸炎
③便の性状は(水様,軟便,色調,回数,脂肪滴の浮遊,出血,粘血便)
④最近数日間の摂取食物,同じものを摂取した人の症状出現の有無⇒食中毒
⑤海外渡航歴の有無⇒輸入感染症
3身体所見
①脱水の確認:舌など口腔粘膜所見を観察して,脱水の有無を観察する.
②腹部視診,触診,聴診:腹部膨隆や腹膜刺激症状の有無を確認する.一般に下痢をしている患者は腸蠕動音が亢進している.
4検査
発熱を伴い感染性の病態を疑う場合には採血によって炎症所見の有無を確認することがあるが,頻回の下痢や腹痛の刺激だけで白血球数は上昇するのでその解釈には注意が必要である.
1便検査
①便培養:必要なケース,実際に有意細菌が検出される可能性は高くない.食事歴や多発例であることなどから食中毒を疑う場合や,海外渡航歴からコレラ,チフスな
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