A.ER診療のポイント
●脱水は様々な要因で起こるが,重篤な場合ショックとなり,意識障害も起こり,さらには呼吸不全となり致死的となる可能性がある.ABC・安定化から入る.
●低容量性以外のショックを起こす病態の鑑別も重要である.
●消化器系の疾患が原因としての頻度が多いが,消化器疾患以外で心血管系,神経系,婦人科系,耳鼻科,眼科,中毒,内分泌代謝系などと様々な疾患の可能性もある.
●中枢神経疾患(アルツハイマー病・認知症,脳炎・髄膜炎,薬物摂取を含む代謝性疾患も含む)で意識低下のため,口渇中枢の刺激に対応して適切に水分摂取ができない場合や,筋末梢神経疾患などで口渇中枢の刺激には対応しても物理的に水分摂取ができない場合でも重篤となることがある.
●両極端の年齢層では,上記を合併することもある上に,生理的に,より脱水となりやすく重症化しやすい.
B.最初の処置
1安定化,ABC
①意識障害があるか,バイタルサインが異常,toxic appearing(外観上,重篤にみえる)の場合,即座にABCに始まる安定化に入る.
②酸素,モニターそして心電図,静脈ラインを確保する.
③2度以上末梢静脈ラインの確保に失敗した場合,即座に骨髄(intra osseous)ラインを確保し蘇生を始める.
2輸液蘇生
等張輸液(生食あるいは乳酸リンゲル液薬)大人なら2L,小児なら20mL/kgのボーラス.ただし,心臓,腎臓の基礎疾患がある場合注意が必要.
3簡単な病歴聴取
頻度が高い主訴は嘔吐,下痢,腹痛,発熱,めまい,全身倦怠感である.救急隊,家族からの情報も参考になる.脱水による低容量性以外のショックの鑑別診断も考える.その後,原因疾患の鑑別を行う.
4病歴
現病歴だけでなく,既往歴の基礎疾患,家族歴,社会歴も重要である.
①現病歴:嘔吐,下痢,腹痛が多いが消化器系以外の原因も可能性として考える.また,高体温,低体温の有無も