A.疾患・病態の概要
●急性冠症候群とは,急性心筋梗塞,不安定狭心症,虚血性突然死を含む疾患群である.ともに冠動脈粥腫の破綻から血栓形成が生じて発症する.
●血栓形成の成因としては,動脈硬化巣の線維性被膜が薄い部分に破綻が生じ,その部分に修復過程として血栓形成が生じるものである.閉塞血栓となればST上昇型となり,非閉塞であれば非ST上昇型心筋梗塞あるいは不安定狭心症にとどまる.
●梗塞サイズを縮小し予後の改善を目的に,AHA/ACC(American College of Cardiology)ガイドライン勧告にあるように,総虚血時間を2時間以内,すなわち発症から再灌流療法施行までを2時間以内にすることが重要である(図1図).そのためには,119番通報が不可欠であり,救急隊(Emergency Medical Service:EMS)到着から線溶療法開始まで(EMS-to-drug時間)30分以