A.疾患・病態の概要
●急性冠症候群とは,急性心筋梗塞,不安定狭心症,虚血性突然死を含む疾患群である.ともに冠動脈粥腫の破綻から血栓形成が生じて発症する.
●血栓形成の成因としては,動脈硬化巣の線維性被膜が薄い部分に破綻が生じ,その部分に修復過程として血栓形成が生じるものである.閉塞血栓となればST上昇型となり,非閉塞であれば非ST上昇型心筋梗塞あるいは不安定狭心症にとどまる.
●梗塞サイズを縮小し予後の改善を目的に,AHA/ACC(American College of Cardiology)ガイドライン勧告にあるように,総虚血時間を2時間以内,すなわち発症から再灌流療法施行までを2時間以内にすることが重要である(図1図).そのためには,119番通報が不可欠であり,救急隊(Emergency Medical Service:EMS)到着から線溶療法開始まで(EMS-to-drug時間)30分以内あるいは救急隊からバルーン拡張まで(EMS-to-balloon時間)90分以内が勧告される.地域救急システムにおいて,短時間で遅延なく再灌流療法を実施可能なネットワークを構築する必要がある.救急隊によりSTEMIが事前に推定できると経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が可能な施設への搬送が可能となり,さらに専門医との連携により救急室での時間の浪費を避け,直ちにカテーテル検査室に搬入することも可能となる.
B.初期診断と最初の処置
急性冠症候群の診断は,症状に加え12誘導心電図と血液検査(トロポニンT)により実施される.ST上昇型急性心筋梗塞については,12誘導心電図診断により比較的診断は容易である(NSTEMIの図参照,図).再灌流療法を可能な限り迅速に実施するため,救急室での診断や初期治療を10分以内に実施し,血栓溶解療法やPCI開始が遅れないようにする.
1臨床症状
通常30分以上
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