A.疾患・病態の概要
●大動脈瘤は「大動脈壁一部の全周,または局所が拡張した状態」とする.大動脈の正常径としては,一般に胸部で3cm,腹部で2cmとされており,壁の一部が局所的に拡張する場合(嚢状大動脈瘤),または直径が正常径の1.5倍(胸部で4.5cm,腹部で3cm)を越えた(紡錘状大動脈瘤)場合に「瘤」と称している.
●大動脈瘤は①存在部位,②瘤の形,③瘤壁の形態,④瘤の原因により分類されている(表1図).真性瘤は病理組織学的にその壁に本来の大動脈壁の構造(内膜,中膜,外膜)が残っているものである(特に中膜の弾性線維が残っている).仮性大動脈瘤は大動脈壁が破綻したために血管外にできた血腫による瘤状構造物であり,血腫を被覆する線維性構造物に中膜の弾性線維は認められない.
●大動脈瘤による症候は,①解離発症や瘤破裂によって生じる「疼痛」,②瘤が周囲臓器へ及ぼす「圧迫症状(胸部:嗄声,嚥下障害,顔