A.疾患・病態の概要
●急性動脈閉塞には脳梗塞,心筋梗塞,腸間膜動脈塞栓症などを含むべきだが,ここでは突然発生した四肢(ことに下肢)主幹動脈の閉塞によって,血流が及ぶ末梢組織を阻血に陥らせる病態を指す.四肢では側副血行路が発達していないため,急激な動脈閉塞をきたすと,末梢組織の阻血は(慢性閉塞とは比較にならないほど)劇症となる.
●血流再開が得られないと,神経⇒筋肉⇒皮膚の順で急速な壊死に陥る.閉塞が高位で,広範な場合,大量の筋組織が高度の阻血に陥り,数日のうちに肢の壊死が完成する.また,血流再開に伴う虚血再灌流障害が加わると,筋組織の破壊に伴い諸種の酵素・電解質・ミオグロビン・サイトカイン・活性化白血球などが血中に多量に放出され,腎不全をきたす.より高度な場合にはARDSやショックなど全身諸臓器の障害が現れ,多臓器障害を呈する.これをmyonephropathic metabolic syn