診療支援
治療

インフルエンザ(新型・高病原性を含む)
influenza
北沢貴利
(帝京大学講師・内科学)
太田康男
(帝京大学教授・内科学)

A.疾患・病態の概要

●インフルエンザウイルスによる全身感染症である.インフルエンザウイルスは,A型,B型,C型の3つに分類されるが,C型は一般的に季節性の流行や典型的なインフルエンザの症状を呈さないため,通常A型,B型が問題となる.このうちA型インフルエンザウイルスは,表面のHA(hemagglutinin:血球凝集素)とNA(neuraminidase:ノイラミニターゼ)という2つの蛋白質の抗原性によって,血清亜型が分類される.HAではH1~15,NAではN1~9に分類されている.

●インフルエンザウイルスは変異しやすいウイルスであり,HAとNAは同じ亜型でもわずかな変化が常に起きることで感染し,ヒト-ヒト間の流行が成立する.この変異を「連続抗原変異(antigenic drift)」とよび,例年流行しているウイルスを「季節性インフルエンザ」とよぶ.一方,ヒトやトリのインフルエンザがブタなどに交雑して感染することで,遺伝子再集合により新種のウイルスが誕生し,ヒトへの感染性が獲得された場合,流行が世界的に拡大することがある.この変異を「不連続抗原変異(antigenic shift)」と呼び,ヒトがこれまでに免疫を持っていなかった新たなウイルスを「新型インフルエンザウイルス」と呼ぶ.本項では2009年以降,世界的に流行しているブタ由来インフルエンザH1N1pdmを新型インフルエンザ,それ以前に流行していたヒトインフルエンザを季節性インフルエンザと表記する.ただし,2010-2011シーズンの流行状況から判断すると,新型インフルエンザ(ブタ由来インフルエンザH1N1 pdm)はH1N1インフルエンザ(ソ連型)におきかわって季節性インフルエンザの一つに組み込まれたと考えられる.したがって,今後ブタ由来新型インフルエンザと季節性インフルエンザを厳密に区別する必要はなくなるものと思わ

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