A.疾患・病態の概要
●蜂窩織炎をはじめとする軟部組織感染症は,日常診療で多くみられる疾患で予後も良好なことが多い.しかし,初期には蜂窩織炎に類似した症状でありながら,急速に進行し敗血症となり致死的経過に発展する疾患群として壊死性軟部組織感染症(NSI)がある.治療が遅れると死亡率がきわめて高く,早期に認知し治療を開始することが重要である.
●筋組織の壊死を主体としてガス産性菌により皮下気腫を伴うガス壊疽(クロストリジウム性ガス壊疽,非クロストリジウム性ガス壊疽)と,筋膜の壊死が主体である壊死性筋膜炎(特殊な壊死性筋膜炎として劇症型A群β溶連菌感染症,敗血症型ビブリオ感染症)がある.非クロストリジウム性ガス壊疽や敗血症型ビブリオ感染症は,特に糖尿病,肝硬変などの免疫能の低下した基礎疾患を持つ患者に起こりやすいが,クロストリジウム性ガス壊疽や劇症型A群β溶連菌感染症は,基礎疾患を持たない健常者でも発症しうることに注意する.それぞれの疾患の特徴を知り,「もしかして…」と疑心を持つことが早期発見につながる(表1図).
●救急診療でのポイントを以下に示す.
・不相応に強い疼痛,水疱や紫斑を伴う皮膚変化,急激に症状が進行する蜂窩織炎様の病変に注意.
・全身症状の有無をチェック.
・高率に敗血症,ショック,多臓器不全に至り死亡率が高い.
・早期にデブリドマンや患肢切断が必要になる.
B.最初の処置
1バイタルサインのチェックと蘇生
クロストリジウム性ガス壊疽や劇症型溶連菌感染症,敗血症型ビブリオ感染症などでは,急速にショックに陥ることがある.来院時すでにショックとなり,低血圧で意識レベルの低下が起こっていることもある.ショック状態であれば,蘇生が優先される.酸素投与の開始,気道の確保,静脈路の確保,輸液蘇生の開始が必要なこともある.
2疑診を持つためのチェックポイント(病歴,進行経過,合併疾患)
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