診療支援
治療

嘔吐・下痢(脱水を含む)
vomiting・diarrhea
久保 実
(石川県立中央病院副院長・いしかわ総合母子医療センター長)

A.小児ならではのポイント

●嘔吐や下痢を主症状とする疾患としては,小児全体では急性胃腸炎(感染性胃腸炎)の頻度が最も高い.

●一方で,年齢によって嘔吐や下痢の主な原因疾患が異なるのが小児の最大の特徴である.

●先天性の消化器疾患,内分泌代謝疾患,感染症,中枢神経疾患など,原因は多彩である.

●脱水症を引き起こしやすい.短時間でショックに陥りやすく,緊急度の判定が重要である.

●小児科診療では頻度の多い疾患から鑑別するが,小児救急の現場では「見逃してはいけない疾患」から鑑別する.

●緊急度の高い疾患を見逃さないために,pediatric assessment triangle(PAT)とバイタルサインでチェックする.

●胃腸炎を伴う中等症までの脱水症の治療およびその予防には,経口補水療法(oral rehydration therapy:ORT)が輸液と同等に有用である.


B.最初の処置

1pediatric assessment triangle(PAT)(図1)とバイタルサイン

1初期評価のPAT 患児が入室し診察を始める前までに,児に触れず,興奮させずに,外観・意識,呼吸状態,循環状態を観察し,いわゆる「パッと見」で状態を評価する.

①外観,意識:外観では,筋緊張はよいか,オモチャなどに興味を示すか,あやすと泣き止むか,視線はどうか,会話や啼泣が力強いかを評価する.

②呼吸状態:呼吸では喘鳴,呻吟,嗄声があるか,鼻翼呼吸,陥没呼吸があるかをチェックする.

③循環状態:皮膚の循環で判断する.皮膚は蒼白か,チアノーゼはあるか,まだらな斑状の皮疹はないか.

2バイタルサイン 呼吸数,心拍数,血圧をチェックする.それぞれ,年齢による正常値が異なる.±1SDは緊急度を上げて対応する必要がある.

3SpO2 SpO2が90~94%は準緊急で,<90%は緊急である.

4CRT(capillary refilli

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