トキシドローム(toxidrome)とは,toxic(毒物の)syndrome(症候群)の意味であり,ある特定の毒物群が呈する症状や徴候のことである.
原因不明の症候(意識障害,瞳孔異常,痙攣,高体温,不整脈,高血圧,低血圧,酸塩基異常など)を認めた場合には,中毒も疑わなければならない.
毒物の種類や数は非常に多く,その症候は多岐にわたるが,作用機序の類似した毒物群(toxins)は,類似した症状・徴候群(syndrome)を呈する.
固有の原因毒物が確定されていなくても,トキシドロームにより特定の毒物群を推定し,治療を開始する必要がある.大部分の中毒では支持療法が中心となるが,特異的解毒剤が存在する場合には投与する
トキシドロームとしては,まず救命処置とも直結するバイタルサインである「意識」 「呼吸数」 「血圧」 「心拍数(12誘導心電図)」 「体温」は必須項目である.さらに様々な中毒により発現する「瞳孔異常」 「振戦・痙攣」,「気道・消化管・尿路系・涙管・皮膚の分泌増加・減少」,「呼気臭」その他を加える.
トキシドロームは,きわめて多様多彩であるが,まず表1図の5群の物質が臨床的に重要である.
A.オピオイド
1トキシドローム
①3徴は「意識障害」 「呼吸抑制」 「縮瞳」である.舌根沈下・誤嚥・呼吸抑制による呼吸障害が死亡原因となる.
②オピオイドは,中枢神経系にあるオピオイド受容体と結合して作用を発揮する.μ1受容体との結合により鎮痛作用や多幸感を,μ2受容体との結合により呼吸抑制,鎮静~昏睡,徐脈,血圧低下,縮瞳,腸蠕動抑制,排尿障害,薬物依存性などをきたす.
2原因薬物
モルヒネ,フェンタニル,ヘロイン
3拮抗薬
ナロキソン
B.鎮静薬,催眠薬
1トキシドローム
中毒徴候としては,「意識障害」と「呼吸抑制」が死亡原因として重要である.
その他,せん妄,幻覚,知覚異常,運動失調,
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