今日の診療
内科診断学

喘鳴
海老名 雅仁


喘鳴とは

■定義

 聴診器なしで聴かれる異常呼吸音のうち,喘鳴(wheeze)とは,高音性で連続性の副雑音(adventitious sound)に分類され(表3-184),主に呼気時,ときに吸気時にも聴取される.ここでいう高音性とは,その主な周波数が400Hz以上であることを指し,また連続性とは副雑音が0.25秒以上続くことを指す.

 一方,低音性の連続性副雑音をrhonchi,胸郭外の気管狭窄部に聴かれる吸気時の高音性の連続性副雑音をstridorと呼ぶ.

■患者の訴え方

 患者は,「のどがヒューヒューと鳴る」「痰が出にくくて息苦しい」などと訴える.単に「息ができない」「息が切れる」ということもある.

■患者が喘鳴を呈する頻度

 喘鳴を聴取する頻度が最も高いのは気管支喘息の発作時で,特に努力呼気によるものも含めればほぼ100%である.心不全時のいわゆる心臓喘息でも高率に聴取される.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 喘鳴を引き起こすメカニズムには図3-181に示すようなものがあり,以下に解説する.また,喘鳴の主な原因疾患を表3-185に示す.

●喘鳴の出るメカニズム

 喘鳴の音の出るしくみは,おもちゃの笛によくたとえられる.音の高さは気道を狭める固まり,気道壁の固さ,それに気道内気流の速度に依存する(図3-182).実験モデルを用いた研究から,喘鳴は気道壁の振動と気道内の液成分によるが,それを決定づけるのは気流の速度である.表3-186に喘鳴の6つの発生機序をまとめる.

●呼気時に喘鳴が聴かれるメカニズム

 胸壁で聴取される喘鳴が呼気時に聴かれる理由を図3-183に説明する.吸気時には胸腔内圧が陰圧になって肺が膨張し,それによって気道が広げられて狭窄が軽減する.一方,呼気時には肺は縮み,気道壁にかかる弾性収縮力が減少し,さらに努力呼気によって胸腔内圧が高まって気道狭窄がさらに進み,

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