急性中毒とは
■定義
急性中毒とは,化学物質の毒性によって生じた生体の急性有害反応と定義される.
対応する英語にはpoisoningとintoxicationがある.poisoningは毒(poison)によって生じた疾病状態と定義されており,特定の物質としての毒の存在を想定している.一方,intoxicationは,ときにはpoisoningの同義語として用いられることもあるが,本来は「漸次強まる毒」「毒に浸す」の意味から,中毒になりつつある状態を表しているものであり,毒の存在を前提としていない.
したがって,poisoningは金属,酸,アルカリ,植物性自然毒,医薬品,農薬,工業用薬品,食品中の有害物質,毒ガス,細菌毒素,動物性自然毒に起因する疾病が含まれ,intoxicationには重篤なアシドーシス,アルカローシス,アナフィラキシー,自家中毒,水中毒,妊娠中毒などが含まれる.
本項では前者のpoisoningについて解説する.
■患者の訴え方
患者が故意に毒物の摂取をした結果,もしくは通常用量では毒性をもたない物質を過量内服をした結果,体調不良をきたし医療機関を受診したケースにおいては,まず患者本人がその旨の申告をすることが多い.
しかし,誤用などにより生じた中毒症状の場合,患者本人がその症状が中毒に起因していると自覚していないことも多い.身体症状出現前にどのようなイベントがあったか,医療者による医療面接が重要となってくる.
■患者が急性中毒を訴える頻度
東京消防庁の平成25年救急搬送統計では,東京都における平成25年の救急搬送総数657,306人中,薬物服用・吸入・中毒による搬送は4,497人で,全搬送患者の0.7%であった.その内訳・詳細を図3-376図に示す.睡眠薬,鎮痛・鎮静薬の過量内服による搬送事例が最多であり,自然毒,生活用品,消毒薬・洗浄剤,殺虫剤・農薬・除
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