今日の診療
内科診断学

胸苦しさと動悸
46歳 男性
水野 篤


現病歴:今朝5時50分に左胸部の胸苦しさで目が覚めた.その後動悸を自覚し,救急車を要請した.いったん胸部不快感は軽快したが,30分後に救急車内で増悪傾向を認めた.来院時にも胸部不快感および動悸は持続している.

既往歴:2年ほど前から高血圧を指摘され,140/90mmHg程度.

身体所見:意識は清明.身長165cm,体重55kg,体温36.2℃,脈拍数203回/分,血圧84/44mmHg,呼吸数18回/分.呼吸音清明,心音は心拍が速すぎて同定困難.下腿浮腫を認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

不整脈性動悸

心室頻拍

上室性頻拍

心房細動

不整脈器質および胸部不快感の原因として

急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)

肺血栓塞栓症

緊張性気胸

解離性大動脈瘤

Boerhaave症候群

電解質異常

心筋症

頻度の高い疾患

動悸に関して

不整脈性動悸

心因性動悸

胸部不快感に関して

心臓神経症

食道炎

肺炎

胸膜炎

急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 患者は,一般的に動悸・胸痛といった表現は使用しないため,医療面接により各症候に分類していく必要がある.さらに症候が2つ以上オーバーラップすることも多いため,そのような場合には両方の症候に関して同時に鑑別診断を進めていく.

 この患者においては,胸部不快感(胸痛および胸部圧迫感)と動悸という2つの症候を鑑別していく.

 動悸に関してはまず,①生理的な原因,②非心疾患性の原因,③心疾患性の原因に分類する〔症候・病態編「動悸,脈拍異常」参照〕.〈p〉今回の患者は来院時も動悸が持続しているため,12誘導心電図で不整脈による動悸かどうかを判断することが可能である.〈p〉さらに,身体所見ですでに脈拍数の著明な増加および聴診所見で心拍数の増加が疑われることから,頻脈性不整脈の疑いが強

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