今日の診療
内科診断学

徐々に発症した多関節炎
64歳 女性
岸本 暢将


現病歴:1〜2か月前から朝起きたときの手指の握りにくさ(朝のこわばり)に気づいた.中指と薬指の腫脹で指輪の取り外しが難しくなった.手の使い過ぎかと思い,経過をみていたが改善しなかった.2週前からは両手首,両肩の痛みも出現したため,近医を受診し,当院へ紹介された.

既往歴:特記すべきことなし.

生活歴:主婦.喫煙歴なし.飲酒歴はビール週1回程度.

家族歴:膠原病,甲状腺疾患なし.

身体所見:意識は清明.身長158cm,体重54kg,体温36.2℃,脈拍66回/分,血圧120/80mmHg,呼吸数16回/分.口腔内は軽度に乾燥があり,う歯を認める.口内炎はなし.皮疹なし.心肺所見に異常なし.腹部所見に異常なし.神経所見に異常なし.右手指関節の身体所見(図4-32)(左手にも同様の所見を認める).

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

ウイルス性関節炎

関節リウマチ

抗核抗体関連疾患〔全身性エリテマトーデス(SLE),Sjögren症候群など〕

脊椎関節炎(乾癬性関節炎,反応性関節炎,強直性関節炎,炎症性腸炎関連関節炎を含む)

頻度の高い疾患

変形性関節症(通常DIP,PIP関節)

関節リウマチ

リウマチ性多発筋痛症

偽痛風(主に単〜少関節炎だがときに多関節炎)

抗核抗体関連疾患(SLE,Sjögren症候群など)

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 関節痛で受診した患者に対しては,まず真の関節痛(関節炎)であるかを判断する必要がある〔症候・病態編「関節痛」参照〕.手指の関節痛と訴えていても,腱鞘炎や,Raynaud現象に伴う痛みであったり,手根管症候群のしびれを痛み・こわばりと表現する場合もあるので,よく確認する.

 この患者においては,関節直上に痛みを訴え,炎症所見である朝のこわばり(通常30分以上),疼痛,腫脹,熱感,発赤,可動域制限を認めたため多関節炎

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