現病歴:1〜2か月前から朝起きたときの手指の握りにくさ(朝のこわばり)に気づいた.中指と薬指の腫脹で指輪の取り外しが難しくなった.手の使い過ぎかと思い,経過をみていたが改善しなかった.2週前からは両手首,両肩の痛みも出現したため,近医を受診し,当院へ紹介された.
既往歴:特記すべきことなし.
生活歴:主婦.喫煙歴なし.飲酒歴はビール週1回程度.
家族歴:膠原病,甲状腺疾患なし.
身体所見:意識は清明.身長158cm,体重54kg,体温36.2℃,脈拍66回/分,血圧120/80mmHg,呼吸数16回/分.口腔内は軽度に乾燥があり,う歯を認める.口内炎はなし.皮疹なし.心肺所見に異常なし.腹部所見に異常なし.神経所見に異常なし.右手指関節の身体所見(図4-32)図(左手にも同様の所見を認める).
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・ウイルス性関節炎
・関節リウマチ
・抗核抗体関連疾患〔全身性エリテマトーデス(SLE),Sjögren症候群など〕
・脊椎関節炎(乾癬性関節炎,反応性関節炎,強直性関節炎,炎症性腸炎関連関節炎を含む)
頻度の高い疾患
・変形性関節症(通常DIP,PIP関節)
・関節リウマチ
・リウマチ性多発筋痛症
・偽痛風(主に単〜少関節炎だがときに多関節炎)
・抗核抗体関連疾患(SLE,Sjögren症候群など)
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
関節痛で受診した患者に対しては,まず真の関節痛(関節炎)であるかを判断する必要がある〔症候・病態編「関節痛」参照→〕.手指の関節痛と訴えていても,腱鞘炎や,Raynaud現象に伴う痛みであったり,手根管症候群のしびれを痛み・こわばりと表現する場合もあるので,よく確認する.
この患者においては,関節直上に痛みを訴え,炎症所見である朝のこわばり(通常30分以上),疼痛,腫脹,熱感,発赤,可動域制限を認めたため多関節炎
関連リンク
- 内科診断学 第3版/関節痛
- 治療薬マニュアル2023/メトトレキサート《メトジェクト リウマトレックス》
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/1 関節炎
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/4 関節リウマチ
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/5 脊椎関節炎
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/関節症性乾癬
- 新臨床内科学 第10版/4 リウマチ性多発筋痛症,RS3PE症候群
- 今日の整形外科治療指針 第8版/乾癬性関節炎
- 今日の診断指針 第8版/関節リウマチ
- 今日の診断指針 第8版/強直性脊椎炎
- 今日の診断指針 第8版/関節リウマチの骨・関節障害
- 今日の診断指針 第8版/若年性特発性関節炎