今日の診療
内科診断学

発熱・咳を伴った呼吸困難
58歳 男性
有岡 宏子


現病歴:2週前に同居している28歳の息子が感冒に罹患し,38℃に発熱していた.1週前に38.7℃の発熱を自覚.近医を受診し,インフルエンザの迅速テストを施行されたが陰性で,抗菌薬と解熱薬を処方された.その後いったん熱は下がったが,咳がひどくなっていった.昨日から,再び38℃の発熱が出現し,咳と呼吸困難が悪化してきたため外来を受診した.

既往歴:特記事項なし,毎年健康診断を受けているが異常を指摘されたことはない.

生活歴:22歳から会社勤務.妻と2人の子どもと4人暮らし.

喫煙歴:なし.

飲酒歴:週に2,3回,ビール350〜700mL.

家族歴:特記事項なし.

身体所見:意識は清明.身長175cm,体重68kg,体温37.6℃,脈拍86回/分,血圧134/72mmHg,呼吸数16回/分,SpO2 94%.咽頭発赤なく,扁桃肥大なし.頸部リンパ節腫大なし.甲状腺腫大なし.心雑音なく,胸部聴診上両側背部にrhonchiを聴取.腹部平坦・軟で圧痛なく,肝脾腫を認めない.四肢の浮腫を認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

ウイルス性心筋炎

心不全

胸膜炎

肺結核

頻度の高い疾患

感冒

気管支喘息

肺炎

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 生来健康な成人男性であり,感冒に罹患した息子との接触があることを考えると,初発症状はウイルス感染(いわゆる感冒)によるものというのが最も考えやすいであろう.しかし,経過中に一度解熱傾向にあったものの,再度発熱がみられ,咳や呼吸困難が加わっている点は,通常のウイルス感染症の経過とは異なると考えるべきである.

 発熱の長引く原因として,ウイルス感染症に引き続く二次的な肺炎副鼻腔炎などの細菌感染を念頭に入れておくべきである〔症候・病態編「急性感染症」参照〕.また,〈p〉ウイルス性心筋炎は,先行する感冒様症状に続いて心不全をきたす

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