胸部の診察では,胸郭,心臓血管系,肺,気管,乳房,腋窩などを,視診,触診,打診,聴診で調べる.通常はまず患者を座位の状態にして前面を診察し,次いで背面を診察する.仰臥位で診察する場合には,背面は起座位の状態で行うが,側臥位で診察せざるをえないこともある.胸部診察のポイントを表1図に示す.
胸部の診察で得た所見を記載する場合,指標が必要となる.よく使用される縦線(垂直線)および横線(水平線)を図1図,表2図に示す.たとえば,「右側第5肋骨上,鎖骨中線より1cm外方」「左側第3肋間,前腋窩線より1cm内方」などという表現を用いて胸壁上の位置を記す.かつては長さや距離を表現するのに指の幅を使って“横指”で計測することが多かったが,“cm”などで具体的に表現するほうがよい.
また,胸壁上の位置を表す言葉として,慣用的に鎖骨上窩,鎖骨下窩,肩甲部,肩甲間部,肩甲下部などの表現もよく使われる(図1)