診療支援
診断

発熱
fever
松村 正巳
(自治医科大学地域医療学センター センター長/地域医療学センター総合診療部門 教授)

発熱とは

定義

 発熱は外因性抗原(病原微生物)の侵入に対し,至適な増殖温度域を与えないようにする生体の防御反応として,あるいは外因性抗原は関与しない免疫反応として,体温が上昇した状態である.視床下部の視索前野(preoptic area; POA)における体温のセットポイントの上昇と同義である.体温のセットポイントの上昇を伴わない体温上昇は,高体温(hyperthermia)として発熱とは区別する.これは悪性高熱症のように熱放散の能力を超える熱産生が起こる場合や,熱中症のように熱放散のメカニズムが障害されて体温が上昇する場合をいう.

 若年健常者を対象とした研究では,口腔温の平均値は36.8±0.4℃で,午前6時で最も低く,午後4時で最も高かった.体温には較差0.5℃の概日リズムがある.体温は年齢,性別,測定法により変化する.腋窩温 < 口腔温 < 直腸温の順に高い値が測定され,直腸温が深部体温を最も反映する.腋窩温測定は簡便であるが,気温や湿度,発汗の状態などに影響を受けやすい.口腔温が午前37.2℃,午後37.7℃を超えるときを発熱とするが,わが国の臨床では37.5℃を超えたときに発熱とするのが現実的である.41.5℃を超える発熱を異常高熱(hyperpyrexia)といい,脳出血や重症感染症で観察される.一方,深部体温が35℃以下を低体温とする.

患者の訴え方

 最も一般的な訴え方は,「熱が出た(ある)」であろう.その他,「熱っぽい」「体が熱い(ほてる)」「寒気がする(ゾクゾクする)」という表現もある.留意すべきは,37.5℃を超えない体温でも,特に高齢者が「熱がある」と訴える場合である.高齢者は若年者に比べ体温は低い.37.5℃を超えていなくても,炎症病態が存在しうる.体温以外の症状・徴候・身体診察から総合的に判断する.また,ステロイド薬内服中の患者においても注意が必要であ

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