診療支援
診断

皮膚の異常
skin abnormality
川内 康弘
(東京医科大学茨城医療センター皮膚科 教授)

皮膚の異常とは

定義

 皮膚の異常は,他覚的にとらえられる「皮疹(発疹)」(exanthema,enanthema)と,瘙痒や疼痛などの「自覚症状」に分けられる.自覚症のうち,特に瘙痒が皮膚独特の感覚として重要である.皮疹は,視診,触診によって把握できる皮膚の病変であり,自覚症状は医療面接で把握する.皮疹は,一次性に生じる基本的な「原発疹」と,原発疹が変化して生じる「続発疹」に分けられる.皮疹がどのような原発疹・続発疹から構成されているかを判断することは,皮膚病変診断の基本である.以下に,原発疹,続発疹と瘙痒の定義について述べる.

原発疹

①斑(図1)

 皮膚の色調変化を主体とする限局性病変(局面)で,隆起はないかあってもわずかである.赤色調の紅斑,紫紅色調の紫斑,白斑,色素斑があり,色素斑はさらに黒色斑,褐色斑,青色斑に分かれる.

②丘疹(図2a)

 エンドウマメ大(5mm以下)くらいまでの皮表面から隆起する病変.

③結節・小結節(図2b,c,d)

 丘疹より大きい隆起病変を結節と呼び,そのうち比較的小さく丘疹との境界に近いものを小結節,ウズラ卵大より大きく増殖傾向の強いものを腫瘤と呼ぶ.

④水疱・小水疱(図3a,b)

 中に液体を含む隆起病変で,米粒大までを小水疱,それ以上を水疱という.

⑤膿疱(図4)

 水疱の内容が膿性のもので,感染性膿疱と無菌性膿疱がある.

⑥囊腫

 皮膚内に生じた空洞で,上皮性の壁をもつものをいう.間葉性の壁をもつものは偽囊腫と呼ぶ.

⑦膨疹(図5)

 じんま疹の皮膚病変であり,皮膚の限局性浮腫.扁平に隆起し,短時間で消退する.

続発疹

①表皮剝離

 搔破,外傷などにより表皮の小欠損をきたしたもの.

②びらん(図6a)

 表皮の欠損が表皮基底層までにとどまるもの.瘢痕を残さず治癒する.表皮内水疱・膿疱が破れたあとに生じる.

③潰瘍(図6b)

 真皮に及ぶ欠損で,治癒後に瘢痕を残

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