診療支援
診断

肥満
38歳 女性
遠藤 逸朗
(徳島大学大学院生体機能解析学 教授)

現病歴:生来健康であったが,36歳頃より体重増加があり,37歳時より稀発月経,その後無月経となった.38歳時より階段昇降が困難となり,血糖の上昇も指摘されて紹介.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:22歳より中学校教諭.喫煙・飲酒歴なし.服薬歴なし.便秘なし.

家族歴:特記すべきことはない.糖尿病の家族歴なし.

身体所見:意識は清明.身長163cm,体重68kg,BMI 25.6,腹囲86cm,脈拍72回/分,血圧150/90mmHg,体温36.3℃.丸顔で体幹の肥満が認められるが,四肢は細い.心肺異常所見なし.腹部に赤紫色皮膚線条あり.下腿〜足に軽度の非圧痕性浮腫と複数の皮下出血を認める.徒手筋力テスト;三角筋,腸腰筋,大腿四頭筋いずれも4/4.

【問題点の描出】

体重増加と無月経,近位筋優位の筋力低下があり,丸顔,中心性肥満,赤色皮膚線条,皮下出血などを認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・Cushing(クッシング)病/症候群

・甲状腺機能低下症

・偽性副甲状腺機能低下症

・性腺機能低下症

・Stein-Leventhal(スタイン・レベンタール)症候群

・脳腫瘍

・脳炎

・遺伝性肥満

頻度の高い疾患

・原発性肥満

・薬剤性Cushing症候群

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 肥満で受診した患者に対しては,いつ頃から肥満が起こったか,随伴症状の有無,投薬歴(外用薬や吸入製剤についても確認を),家族歴などを詳細に聴取する必要がある.さらに生活歴では,食事の量や回数と内容,遺伝性疾患や生活様式の指標となる最終学歴や職業歴を聴取する.身体診察においては,均整のとれた肥満かどうか,顔貌や皮膚症状,奇形の有無を評価するとともに,二次性肥満に特徴的な所見を見落とさないことが重要である〔症候・病態編「肥満,肥満症」参照〕.

 肥満,肥満症で最も頻度が高いのは原発性肥満

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?