現病歴:1か月前に両側頸部と左鎖骨上のリンパ節が腫れているのに気がついた.痛みや発熱はないが,徐々に大きくなってきたため,受診した.
既往歴:生来健康で,特記すべきことはない.
生活歴:主婦.喫煙歴なし.年に数回の機会飲酒.ペット飼育なし.
家族歴:特記すべきことはない.
身体所見:身長152cm,体重51kg,体温36.3℃,脈拍68回/分(整),血圧110/64mmHg,呼吸数18回/分.眼瞼結膜に貧血はなく,眼球結膜に黄染はない.口蓋扁桃の腫脹はない.両側頸部と左鎖骨上窩に約2cmのリンパ節を計3個触知する.腫大したリンパ節に圧痛はなく弾性硬で可動性がある.心音と呼吸音に異常はなく肝・脾を触れない.浮腫なし.皮疹なし.
【問題点の描出】
これまで健康な61歳女性.緩徐に増大する無痛性の頸部リンパ節腫脹を自覚して受診した.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・悪性リンパ腫
・癌のリンパ節転移
・結核性リンパ節炎
頻度の高い疾患
・ウイルス性リンパ節炎
・細菌性リンパ節炎
・リンパ節腫脹を伴う炎症性疾患(膠原病など)
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
頸部リンパ節腫脹は感染症,腫瘍,その他の疾患(膠原病やサルコイドーシスなど)でみられる.このうち,感染症,なかでもウイルス感染症や細菌感染症が多い.ウイルス感染症としてはライノウイルスなどによるかぜ症候群,インフルエンザ,EBウイルスの初感染である伝染性単核球症などがあり,咽頭痛や咳嗽などの上気道炎症状を伴う.細菌感染症としては連鎖球菌性咽頭炎・扁桃炎,う歯や歯周炎などがあり,細菌が波及して腫脹したリンパ節は圧痛を伴うことが多い.この患者では,上気道炎症状や圧痛を伴うリンパ節腫脹がみられないため,考えにくい.結核性リンパ節炎は緩徐な経過をとるが,通常はリンパ節に圧痛を伴うため,この可能性も低い.
〈p〉炎症所見がなく,
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