診療支援
診断

胸痛
72歳 男性
和田 洋典
(信州大学医学部内科学第一教室 助教)
花岡 正幸
(信州大学医学部附属病院 病院長/信州大学医学部内科学第一教室 教授)

現病歴:3日前,夜間に排尿のため立ち上がった際に胸痛を自覚した.それ以降,動くたびに胸痛を感じていたため,安静臥床しがちであった.本日病院を受診しようと歩いたときに呼吸困難が出現し,家族が救急車を呼び外来へ搬送された.

既往歴:70歳から特発性肺線維症と診断され,抗線維化薬を処方されている.

内服薬:ニンテダニブ.

身体所見:身長170cm,体重65.0kg,体温36.0℃,脈拍86回/分(整),血圧96/60mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 85%(room air).眼瞼結膜に貧血所見は認めない.呼吸音は清明で左右差はなく,両下胸部背側で捻髪音を聴取する.心音ではⅡ音が分裂し,Ⅲ音を聴取する.軽度の下腿浮腫を認める.

【問題点の描出】

特発性肺線維症の既往があり治療中の患者が急性発症の胸痛を自覚し,呼吸困難を伴っている.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・急性冠症候群(心筋梗塞,不安定狭心症)

・肺血栓塞栓症

・緊張性気胸

・急性大動脈解離

・Boerhaave(ブールハーフェ)症候群

頻度の高い疾患

・食道炎

・肺炎

・胸膜炎

・急性冠症候群

・肺血栓塞栓症

・気胸

・貧血

・心因性呼吸困難・胸痛

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 今回の患者においては,胸痛と呼吸困難という2つの症候から鑑別していく.

 胸痛に関して,〈p〉立ち上がった際の胸痛ということで,典型的には深部静脈血栓症からの肺塞栓というエピソードが疑われる.しかし,労作後に発症した点からは急性冠症候群急性大動脈解離も重要な鑑別疾患となる.動くたびに胸痛を感じていた経過からは,急性冠症候群が想起される〔症候・病態編「胸痛および胸部圧迫感」参照〕.

 呼吸困難の観点から,肺疾患貧血心因性の可能性を検討していく必要があり,これらが併存する場合もある〔症候・病態編「呼吸困難」参照〕.

‍ 〈除〉眼瞼結膜に貧血が

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