症候を診るポイント
●放置すると生命にかかわるような急性腹症は絶対に見逃さない.
●突然発症の腹痛は管腔臓器の重篤な病態と関連していることが多く要注意(裂ける,破れる,ねじれる,詰まる).
●常に消化器系以外の原因の可能性も考える(心血管系,婦人科系など).
●妊娠可能年齢の女性の腹痛は妊娠していると思って診察する.
▼定義
部位が局所性か全体かにかかわらず,原因が腹腔臓器か腹腔外臓器かにかかわらず,腹部に感じる疼痛全般を指す(図1-4図).
▼病態生理
内臓痛,体性痛,関連痛の3つに分けて考えるとよい.
➊内臓痛
消化管などの管腔臓器に機械的な外力や炎症などの刺激が加わったときに感じる鈍い痛みで,両側性の神経支配を受けているので,痛みを正中付近に感じることが多い.また管腔臓器は時に拡張や伸展による間欠的な痛みを起こし,この痛みを特に疝痛とよぶ.内臓痛を伝える神経は脊髄で自律神経系との間に反射弓を形成し