症候を診るポイント
●深部体温を測定し重症度を決める.
●受動的または能動的加温により,すみやかに復温する.
●心肺蘇生は30~32℃になるまで続ける.復温前に死亡宣告はしない.
▼定義
低体温とは深部体温が35℃以下に下がった状態である.直腸(または食道)で深部体温を測定し重症度を決める(表1-23図).
▼病態生理
寒冷環境では運動や震えにより体温を37℃に保とうとする.甲状腺機能は高まりアドレナリンが分泌される.熱の喪失を防ぐため末梢血管は収縮し,組織の代謝は低下する.
一次性低体温とは,健康な人が寒冷ストレスに打ち勝ち体温を維持することができなくなった状態である.二次性低体温は敗血症や甲状腺機能低下症などの疾患のために起こる低体温である.温かい環境でも起こりうる.
リスクファクターは高齢,慢性疾患,低栄養,精神疾患,ホームレス,薬物中毒である.
▼初期対応
低体温患者は体位変換などでも不整脈を誘発しやすいので,体位を変えるときは慎重に扱う.呼吸や体動があれば,注意深く観察を続ける.生命徴候がなければ心肺蘇生を開始する.
暖かい部屋で濡れた衣服を除去し,全身を毛布または断熱ブランケットで包む(受動的加温).適応があれば,気管挿管などにより気道を確保する.復温ができる医療機関に迅速に搬送する.
▼鑑別診断
敗血症,甲状腺機能低下症,副腎不全,低栄養,低血糖,薬剤(糖尿病治療薬,β遮断薬,麻酔薬)は二次性低体温を引き起こす.
意識障害を伴う疾患が原因で寒冷環境にさらされることがある.
低体温症で特徴的な心電図はOsborn(オズボーン)波(Jポイントの上昇)である.
▼基本的治療方針
直腸(または食道)で深部体温を計測する.末梢ルートを確保し生理食塩液薬の点滴を開始する.末梢が冷たくて血管ルートの確保が難しいときは骨髄針を用いて点滴することもある.
循環動態が落ち着いている中等症の低温症