診療支援
治療

【6】起立性低血圧
orthostatic hypotension(OH)
任 理宏
(八尾市立病院・腫瘍内科副医長)
志水 太郎
(獨協医科大学主任教授・総合診療医学)

症候を診るポイント

●立位への体位変換後にめまい,ふらつき,立ちくらみ,眼前暗黒感,失神が数分以内に起こる際に疑う.

●貧血,脱水,神経疾患,糖尿病があればこれら基礎病態の随伴症状として想起する.

▼定義

 自律神経不全(交感神経による血管収縮不全)の徴候である.起立時あるいはSchellong(シェロング)試験で3分以内に20mmHg以上の収縮期血圧低下あるいは10mmHg以上の拡張期血圧の低下が持続,あるいは収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下したときと定義される.多くの場合低血圧にもかかわらず,代償性の心拍数増加は認められない〔第3章のも参照〕.

 一般的には血圧低下のみでは典型的な症状は必ずしも出現せず,一見不定愁訴と思えるような易疲労感や倦怠感のみで受診することもある.外来受診の契機としては失神まできたした場合が多い.

▼病態生理

 仰臥位から立位になると,体位変換に伴う重力の影響で,心臓への還流血液量が減少する.循環動態の変化に対して,健常人は圧受容体反射系が適切に機能するため,心拍数増加・心収縮力増加・末梢血管抵抗増加・末梢血管を収縮させることで,血圧の過剰低下を避けている.この圧受容体反射系の異常,もしくは高度の循環血液量の低下がある場合,起立時に高度の血圧低下を認める.

▼初期対応

 OHは,めまいやふらつきがたびたび出現し,増悪すると失神発作をもたらし日常生活に支障を与える.どのような場面で症状が起こったのか,丁寧な病歴聴取を行う.同時に,動悸,便秘,発汗低下などのエピソードや,自律神経症状をきたすような既往歴などを含めた全身の自律神経障害の程度を評価する.

 身体所見では臥位から立位へ体位変換後しばらくたって症状出現などの状況があれば,OHを念頭においた検査を進めていく.診断には起立試験を行う.約3分間の起立でOHの約90%が診断できると報告されている.検査ではO

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