診療支援
治療

【4】下痢
diarrhea
北川 泉
(湘南鎌倉総合病院・総合内科・総合診療科部長)

症候を診るポイント

●ほとんどの急性下痢は,腸管の炎症によるものであるが,慢性の場合では腸管の異常に起因しないものもある.

▼定義

 水分含量の多い液状の糞便を頻回に排出する状態をいう.急性下痢は1日3~4回以上の排便が2週間以内にみられる状態.慢性下痢は,4週間以上持続するものをいう.

▼病態生理

 通常1日あたり,水分摂取量2Lに加え,約7Lの消化液が小腸に流入する.小腸では70~80%が吸収され,回腸末端で泥状となり,残りの水分は結腸で吸収され,糞便中には100~200mL程度の水分が排泄される.

 腸管運動は自律神経の支配を受け,さらに消化管ホルモン,心身的因子も関与する.下痢の機序としては,腸管内の浸透圧活性物質による水吸収障害,消化管,特に小腸の分泌異常亢進,腸粘膜構造の破壊,ろ過の増加,腸管運動の異常などが挙げられる.

▼初期対応

 急性下痢症と判断したら,下痢による脱水の状態評価をしながら,原因検索をする.バイタルサインが不安定な場合は,輸液をしながら原因検索を行う.

 慢性下痢症は急性とは異なりほとんどが非感染性であり,潜在する重篤な病態をみつけるために精査が必要である.

▼鑑別診断

 急性下痢症の原因はウイルスもしくは細菌感染が主となり,急性と慢性との間では原虫・寄生虫を疑い,慢性では非感染性疾患(炎症性腸疾患,悪性疾患,糖尿病,腸管虚血など)が主となり,例外として腸結核,腸管アメーバ症状,非結核性抗酸菌症などが挙げられる.

 病歴聴取では,既往歴,使用薬剤,旅行歴,生活歴を聴取することは忘れないようにする.食中毒は食事摂取歴,随伴症状で多くは推定可能である.

 慢性下痢症の原因は,過敏性腸症候群であることが多いが,体重減少,貧血,血便,脂肪便があれば精査が必要である.

 下痢イコール腸管の炎症によるものと考えがちであるが,腸閉塞,腸間膜の血流障害,膿瘍など腹腔内感染,急性腎盂腎炎

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