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治療

1 肺炎総論
pneumonia
迎 寛
(長崎大学大学院教授・呼吸器内科学分野(第二内科))

疾患を疑うポイント

●急性に出現する,咳嗽,喀痰,発熱,呼吸困難などの症状に加え,炎症反応と胸部X線やCTで新たに出現した陰影を確認.

学びのポイント

●肺炎は発症頻度が比較的高く,また,日本人の死因としても第5位と死亡率も高い重要な疾患.

●患者の予後を改善し,また耐性菌の蔓延を防ぐためには,適切な診断と治療が重要.

●肺炎にはさまざまな分類があるが,発症場所と病態による分類がよく用いられる(市中肺炎,医療・介護関連肺炎,院内肺炎).

●肺炎と鑑別すべき疾患は多くあり,肺炎以外の疾患である可能性も考える.

●高齢者では症状に乏しく,食思不振や意識障害のみのことがある.

▼定義

 肺炎とは病原微生物により肺実質に起こる急性の感染性炎症を意味する.肺炎の典型的な症状は咳嗽,喀痰,発熱,呼吸困難であり,末梢血好中球数の増加や血清CRP値上昇などの検査所見に加え,胸部X線写真やCTで新たに出現した陰影を認める.

▼病態

 肺炎では基本的に経気道的に肺内へ侵入した病原微生物が感染し,それに伴う宿主の反応により,好中球を中心とした炎症が肺胞領域で起こる.肺は直接外界と接しており,また,免疫機構を中心に複雑な防護システムを備えているために,肺炎の発症は細菌の病原性と宿主の免疫機構の状態に左右される.高齢者肺炎では宿主の免疫力の低下や気道の機械的バリア機構の破綻が問題となるが,マイコプラズマなどによる肺炎は宿主の過剰な免疫反応が肺炎発症に影響している.肺炎は,飛沫などを吸入することで外因性に細菌に感染したり,もともと存在する口腔内の細菌を誤嚥したり,また,体のほかの感染巣からの原因菌が肺に病巣をつくることなどで発症する.

▼疫学

 戦後,抗菌薬治療の進歩などにより減少傾向にあった肺炎による死亡者数は,急速に進む高齢化を背景に1980年ごろから再増加に転じ,2011年には肺炎は脳血管疾患を抜いてわが国における死因の

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