診療支援
治療

3 肺動静脈瘻
pulmonary arteriovenous fistula/malformation
井上 博雅
(鹿児島大学大学院教授・呼吸器内科学)

疾患を疑うポイント

●胸部X線写真で境界明瞭な結節影がみられ,胸部CTで結節影に連続する血管影が認められた場合に肺動静脈瘻を疑う.症状は,肺動静脈瘻の数や大きさによりさまざま.

学びのポイント

●胸部異常陰影で結節陰影を認めた場合,肺動静脈瘻を鑑別診断の1つとして考慮する.

▼定義

 肺動静脈瘻は,肺動脈と肺静脈が肺内で異常短絡(シャント)をきたす血管異常である.

▼病態

‍ 遺伝性出血性毛細血管拡張症〔hereditary hemorrhagic telangiectasia:HHT,Rendu-Osler-Weber(ランデュ-オスラー-ウェーバー)病〕に合併することが多い.HHTは常染色体優性遺伝を示す遺伝性疾患で,鼻出血,舌・口腔粘膜・指・鼻の毛細血管拡張,内臓病変(胃腸毛細血管拡張,肺,肝,脳,脊髄動静脈瘻)を特徴とする.責任遺伝子としては,ENGALK1SMAD4の3つが確認されている.多くは先天奇形であるが,外傷,肝硬変,住血吸虫症などに続発する報告もある.

 臨床症状では,右左シャントにより,低酸素血症を伴う場合は労作時呼吸困難,チアノーゼ,ばち状指,多血症が代表的で,脳血栓塞栓症,脳膿瘍,細菌性心内膜炎を合併しやすい.肺動静脈瘻の破裂による喀血や血胸を伴うことがある.

▼疫学

 比較的まれな疾患で,38人/10万人との報告がある.

▼分類

 肺動静脈瘻は流入動脈が1本であるsimple typeと,2本以上あるcomplex typeに分類され,全体の95%以上がsimple typeである.また,病変数から単発性,多発性に分類される.肺動静脈瘻の約30%は単発性であるが,HHTに合併した肺動静脈瘻は多発性が多い.

▼診断

 HHTの合併頻度が高いので,家族歴に注意し,繰り返す鼻出血,皮膚や口腔粘膜などの末梢血管拡張他臓器の動静脈奇形も検索する.

 吸気時に増強する血管雑音を聴取

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