▼定義
縦隔気腫とは,気管・気管支,食道以外の縦隔組織に空気が貯留した状態をいう.気縦隔(pneumomediastinum)ともよばれる.
▼病態
縦隔気腫は,激しい咳嗽などによる胸腔内圧の上昇が急激な肺胞内圧上昇の原因となり,肺胞が破れ,漏出した空気が気管支血管束周囲の間質を通って肺門部より縦隔に達する.反対に胸膜側に達して気胸をきたす場合もあるが頻度は低い.縦隔気腫が進行すると頸部筋膜に沿って皮下に空気が貯留し,皮下気腫をきたす場合が多い.呼吸器内科領域では,原因として間質性肺炎の頻度が高く,ステロイド治療との関連も示唆される.縦隔気腫を併発した間質性肺炎患者の予後は不良と報告されている.若年者でも,喘息や百日咳などによる激しい咳嗽が誘因となり発症することがある.特に基礎疾患がなく発症した場合,特発性とよばれるが,運動や荷物の運搬など誘因が明らかな場合もある.一方で,頸部・胸部・腹部の疾患,外傷,手術,感染などが直接の原因となり,発症する場合もある.
▼診断
➊臨床所見
胸痛,胸部圧迫感,呼吸困難などを訴えることが多い.頸部や前胸部に皮下気腫を伴う場合には,触診上,握雪感がある.一方で聴診上,心拍動に同期して高調な不連続音を聴取することがあり,Hamman(ハンマン)徴候とよばれている.
➋画像所見
胸部X線写真で縦隔の外側に低吸収域と線状陰影がみられたり,縦隔に泡状陰影がみられることがある.漏れた空気の量が多い場合,左右の横隔膜が連続してみえ,continuous diaphragm signといわれる.胸部CT検査で診断は確実となる.間質性肺炎に合併した縦隔気腫の画像を示す(図2-83図).
▼治療・予後
安静のみで数日から1週間程度で改善する場合が多い.二次性の場合には原因疾患の治療を要する.経過中,発熱や炎症反応の亢進を伴う場合には抗菌薬の投与を行う.まれではあるが,静