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治療

4 発作性上室頻拍
paroxysmal supraventricular tachycardia(PSVT)
池田 隆徳
(東邦大学大学院教授・循環器内科学)

▼定義

 心房または房室結節が頻拍の維持に関与し,P波とQRS波が1:1に対応する規則正しい頻脈性不整脈である.電気生理学的には複数のタイプに分けられ,主なものは房室結節リエントリー性頻拍房室回帰性頻拍である.

▼病態

 心臓内の器質的病態との関連性は比較的薄い.メカニズムはリエントリーである.本来は存在しない異常伝導路の存在により頻拍が形成される.

 房室結節リエントリー性頻拍は房室結節部の二重伝導路,つまり伝導速度の速い本来の房室結節(速伝導路)と伝導速度の遅い遅伝導路との間でリエントリーを形成する.遅伝導路を順伝導し速伝導路を逆伝導するタイプ(通常型)が一般的である.

 房室回帰性頻拍はWPW(Wolff-Parkinson-White)症候群に起因する頻拍で,房室結節と房室間に存在する(伝導速度が速い)副伝導路〔Kent(ケント)束〕の間で大きなリエントリーを形成する.房室結節を順伝導し副伝導路を逆伝導するタイプ(順向性)が一般的である.

▼疫学

 罹患率は0.1~0.2%程度とされている.比較的若い時期(青年期~中年期)に初回の発作を認めることが多い.

▼分類

 電気生理学的には,①洞結節リエントリー性頻拍,②心房内リエントリー性頻拍,③房室結節リエントリー性頻拍,④房室回帰性頻拍の4種類に分けられる.③と④の2つで全体の90%を占める(③のほうがやや多い).④はWPW症候群に起因するもので,2つの伝導の間を大きく旋回するため,リエントリー性という用語ではなく,「回帰性」という用語が用いられている.

▼症状

 規則性のある動悸発作を自覚する.突然発症して突然停止するのが特徴である.

▼診断

 診断は心電図検査でなされる.

心電図所見

 P波とQRS波が1:1に対応し,QRS幅が洞調律と同様に狭く,規則的な頻拍を呈する(図3-27).房室回帰性頻拍(順向性)では頻拍中に逆行性P波をQRS波

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