診療支援
治療

1 腎実質性高血圧
renal parenchymal hypertension
大石 充
(鹿児島大学大学院教授・心臓血管・高血圧内科学)

疾患を疑うポイント

●高血圧の2~5%と二次性高血圧〔本章「内分泌性高血圧」の項の表3-45参照〕のなかで最も頻度が高い.

●高血圧と慢性腎臓病(CKD)は相互に悪循環をきたす.

学びのポイント

●蛋白尿を伴うか否かで治療法が異なる.

●厳格な降圧と蛋白尿減少が透析導入を遅らせる.

●糸球体腎炎や多発性囊胞腎などは原疾患することにより治療アプローチが可能である.

▼定義

 腎実質疾患に基づく高血圧と定義される.

▼病態

‍ 糖尿病性腎症は高血糖・高インスリン血症により輸入細動脈調節機構が破綻して,糸球体高血圧となることにより過ろ過をきたして蛋白尿および腎機能低下を呈する.

‍ 慢性糸球体腎炎では腎機能障害の進行につれ血圧は上昇し,腎生検組織所見で高度な組織障害を有する例ほど高血圧を呈しやすい.Na排泄障害(食塩感受性亢進)による体液貯留,レニン-アンジオテンシン(RA)系の不適切な活性化,交感神経系の関与などが考えられる.

‍ 腎硬化症では全身血圧の上昇に対して輸入細動脈が収縮することにより糸球体血圧を一定に保つ代わりに,糸球体ろ過量が低下してメサンギウム細胞の増殖などにより腎機能が低下する.

‍ 多発性囊胞腎は両側の腎臓に囊胞が多発する疾患であり,PKD1PKD2(常染色体顕性)およびその他の常染色体潜性遺伝がある.高血圧は腎機能が正常な初期から約60%に認められ,囊胞による血管系の圧排によって腎局所が虚血に陥り,その結果としてレニン分泌や交感神経活性が亢進することが高血圧の発症に関与する.

▼疫学

 腎実質性高血圧の原因疾患は1位は糖尿病性腎症,2位は慢性糸球体腎炎,3位は腎硬化症,4位は多発性囊胞腎で約80%を占める.

▼分類

 糖尿病性と非糖尿病性に分類し,さらに蛋白尿の有無(0.15g/gCr以上)で分類する.

▼診断

 eGFR<60mL/分/1.73m2もしくは蛋白尿の存在.糖尿病合併もしくは

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