▼病態
慢性動脈閉塞症と急性動脈閉塞症の違いは,側副血行路の発達の差にある.2011年のACCF/AHAガイドライン改訂版では,腹部大動脈,腹部内臓動脈,腎動脈,下肢動脈の動脈硬化性疾患,動脈瘤,血栓塞栓症,これらの疾患すべてを指す用語として末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)は使用されている.2011年のESCガイドラインではACCF/AHAガイドラインが対象とした頸動脈,椎骨動脈,四肢動脈,腹部内臓動脈,腎動脈の動脈硬化性疾患を指しており,大動脈疾患,動脈瘤,血栓塞栓症(急性動脈閉塞症)は含まれていない.本項では動脈瘤,血栓塞栓症を除いた慢性動脈疾患を罹患動脈別に解説する.
➊下肢動脈
閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)が大部分を占め,ほかにBuerger(バージャー)病,膠原病,膝窩動脈捕捉症候群や膝窩動脈外膜囊腫,遺残坐骨動脈や動脈瘤の血栓性閉塞,線維筋性異形成症(fibromuscular dysplasia:FMD)などがあるがまれである.Buerger病は,わが国において1970年頃までは慢性動脈閉塞症の半数以上を占めていた.しかし,近年では著明に減少しており,現在ではASOが90%以上を占めるようになっている.重症下肢虚血の臨床症状の重症度分類としては,Fontaine分類が知られている.Ⅰ度は無症状,Ⅱ度は間欠性跛行,Ⅲ度は安静時疼痛,Ⅳ度は潰瘍や壊死で,側副血行路の発達に応じた虚血の重症度を表現するものとして以前から広く用いられている.
1)ASO
本章「閉塞性動脈硬化症」の項(→)を参照.
2)Buerger病
本章「バージャー病(閉塞性血栓血管炎)」の項(→)を参照.
3)その他
●膝窩動脈捕捉症候群
若年者,特に運動選手に多くみられ,腓腹筋内側頭に対する膝窩動脈の走行
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