診療支援
治療

(1)ダンピング症候群
dumping syndrome
野村 務
(日本医科大学准教授・消化器外科)
岩切 勝彦
(日本医科大学主任教授・消化器内科学)

◎早期ダンピング症候群(early dumping syndrome)

▼病態

 胃切除で幽門輪が消失することにより,食物は胃内での停滞や胃液との混和が不十分のまま高張の状態で小腸内に流入する.これを等張化するために大量の細胞外液が腸管内に移動した結果,循環血液量の低下や急激な上部空腸の拡張に伴う腸間膜の牽引などに惹起された自律神経反射による症状が出現する.幽門側胃切除後の再建法ではBillroth(ビルロート)Ⅰ法に比較して短時間で空腸内に食物が流れやすいBillrothⅡ法に多い.

▼症状

 食後20~30分以内に下痢,腹鳴,腹痛などの消化器症状と冷汗,めまい,動悸,顔面紅潮などの血管運動神経反射による症状を認める.炭水化物摂取が誘因となりやすい

▼診断・治療

 前述の症状を食後に認めた場合は早期ダンピング症候群と考え食事療法を行う.低炭水化物,低脂肪,高蛋白食を1回の摂取量を減らして頻回に摂取させる(6回食).また食後1時間位の横臥位も勧められる.薬物療法としては抗セロトニン薬,抗ヒスタミン薬,抗コリン薬などが胃の排出遅延や小腸運動減少を目的として用いられる.抗不安薬や抗うつ薬も用いられる.

◎後期ダンピング症候群(late dumping syndrome)

▼病態

 食事により炭水化物が空腸に急速に流れ込み一時的に高血糖になる.これに対してインスリンが分泌されるが,腸管蠕動が亢進して食物の空腸通過が早い場合はインスリン分泌のタイミングが遅くなりやすい.そのため低血糖を引き起こすとともに副腎からのカテコールアミン分泌が増加してさまざまな症状を引き起こす.

▼症状

 食後2~3時間で頭痛,全身脱力感,冷汗,めまい,動悸などの低血糖症状を認め30~40分程度持続する.早期ダンピング症候群と並存することもあるが,発生頻度は後期ダンピング症候群のほうが低い.

▼診断・治療

 後期ダンピング症候群が

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