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治療

3 消化性潰瘍(胃潰瘍,十二指腸潰瘍)
peptic ulcer(gastric ulcer,duodenal ulcer)
下山 克
(青森県総合健診センター・所長)

疾患を疑うポイント

●心窩部~上腹部痛,膨満感,悪心,嘔吐.

●ふらつき,めまいなどの貧血症状.

●激しい疼痛と筋性防御(穿孔例).

学びのポイント

●日本の胃・十二指腸潰瘍の原因は大部分がピロリ菌感染とNSAIDsあるいはLDAの内服である.

●胃酸分泌抑制薬と内視鏡治療の進歩により,死亡例・外科的治療を要する例は少なくなっている.

▼病態・定義

 胃液中の胃酸・ペプシンといった粘膜攻撃因子と,表層粘液・重炭酸イオンといった防御系因子のバランスが破綻して生じる粘膜欠損である.粘膜筋板までの欠損はびらん,粘膜下層以深の欠損が潰瘍とされる.重篤な合併症として出血,穿孔,狭窄が挙げられる.

▼疫学

 消化性潰瘍の患者数・死亡者数は減少傾向にあったが,ピロリ菌の除菌が保険適用となりさらに顕著に減少した.患者数は,胃潰瘍がピーク時の4割以下,十二指腸潰瘍が2割以下となっている.

▼分類

 病期の分類として,活動期(A1/A2),治癒期(H1/H2),瘢痕期(S1/S2)に分けられる.

▼診断

 胃X線検査でも診断が可能であるが,診断の確定,状況によっては止血などの治療を行うために内視鏡検査が有用である.治療効果の判定に関しても内視鏡検査が選択されるべきである.癌との鑑別のために生検することも必要である.

 穿孔が疑われる場合は単純X線写真,腹部CTが有用である.狭窄の評価は造影剤を用い,透視下に観察する.

▼治療

治療目標と原則

 潰瘍の治癒と自覚症状の消失,再発防止,合併症の治療と予防が目標となる.ピロリ菌感染の有無,NSAIDs・低用量アスピリン(LDA)の内服の有無を確認する.

合併症のない潰瘍の治療

 消化性潰瘍の治療薬にはP-CAB,PPIとH2受容体拮抗薬がある.潰瘍を治癒させるだけではなく,再発を防止することが重要であるので,NSAIDs非内服者ではピロリ菌感染を調べ,感染者では除菌を行う.NSAI

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