診療支援
治療

7 赤痢アメーバ症
amebiasis
斉藤 裕輔
(市立旭川病院・消化器病センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●海外渡航歴の既往,同性愛者,HIV陽性者に下痢,粘血便,腹部膨満感,腹痛をみるときには本症も考える.

●直腸と盲腸に潰瘍性病変がある場合は必ず本症も考える.

学びのポイント

●発展途上国からの輸入感染症として,また同性愛者や性風俗店での異性間感染による性感染症として近年増加傾向.

●赤痢アメーバ症をみた場合は,必ずHIV感染の合併の有無を調べる.

●直腸と盲腸に病変が好発し,タコイボ様潰瘍,多発小びらん・潰瘍が特徴的所見.

●糞便や生検組織の直接検鏡によりアメーバ原虫の検出,血清中抗アメーバ抗体測定の併用.

●潰瘍性大腸炎との鑑別が重要.

●メトロニダゾールが第一選択薬として用いられる.

▼定義

 赤痢アメーバ症(アメーバ赤痢)は,原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)に起因する感染性疾患である〔第11章「赤痢アメーバ症」の項()も参照〕.

▼病態

 感染型の成熟囊子(シスト)によって汚染された飲食物の摂取により経口感染する.囊子は小腸または下部大腸でアメーバ栄養体となって大腸粘膜組織内に侵入,組織を破壊し潰瘍性病変を形成する.大腸内で栄養型から分化した囊子が糞便中に排出され再び感染源となる.

▼疫学

 感染者は全世界で5,000万人,死亡者は年間4万~10万人とされている.東南アジア,アフリカ,中米太平洋岸などが高度流行地域であり,飲食物由来の感染が主体である.ほとんどが無症状囊子保有者であり,感染者の10%程度がアメーバ性肝膿瘍などの有症状者である.わが国では衛生状態の改善とともに激減したが,1980年代になり発展途上国への旅行者による輸入感染症として再び増加傾向がみられている.また,最近は同性愛者や性風俗店での異性間の感染など性感染症(sexually transmitted disease:STD)としての国内感染者が約80%を占めており

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