診療支援
治療

2 クッシング病
Cushing disease
福岡 秀規
(神戸大学医学部附属病院・糖尿病・内分泌内科)
髙橋 裕
(神戸大学大学院准教授・糖尿病・内分泌内科学)

疾患を疑うポイント

●満月様顔貌,中心性肥満などのCushing徴候に注意する.

●若年性の高血圧,糖尿病,骨粗鬆症では積極的に疑う.

●月経異常から診断されることがある.

学びのポイント

●適切に治療しなければ予後の悪い疾患であり,重症例では迅速な血中コルチゾールレベルの是正が必要.

●異所性ACTH症候群や偽性Cushing症候群などとの鑑別診断が困難なことがあり,検査結果の総合的な判断が必要.

●ミクロアデノーマの局在診断が困難なことがあり,術後も20%で再発を認めることから,慎重にフォローする.

▼定義

 ACTH産生下垂体腺腫によるACTH自律性・過剰分泌が原因で,副腎からの糖質コルチコイド分泌が亢進し,Cushing(クッシング)徴候とともに全身性合併症と予後の悪化を呈する疾患.

▼病態

 下垂体腫瘍において糖質コルチコイドによるACTHのネガティブフィードバック機構が破綻し,ACTH自律性・過剰分泌が生じている(図7-5a,b).それに伴い副腎からは糖質コルチコイドとともにアンドロゲンの過剰分泌が,皮膚ではメラノサイトの活性化が生じる.そのため,Cushing徴候だけではなく,男性化徴候,時に色素沈着を呈する.また下記の機序によって代謝異常を引き起こす.

耐糖能異常・糖尿病

①肝においてホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ(phosphoenolpyruvate carboxy kinase:PEPCK),グルコース-6-ホスファターゼ(glucose-6-phosphatase:G6Pase)を活性化することにより糖新生を促進する.

②筋肉,脂肪において糖取り込みを抑制する.

高血圧症

①アンジオテンシノゲン合成促進,アンジオテンシンⅡ,カテコールアミンに対する感受性を亢進させるとともに,一酸化窒素(NO)による血管拡張作用を抑制する.

②遠位尿細管における鉱質コルチコイド受容体を

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