▼定義
女性の性腺である卵巣に発生する腫瘍を卵巣腫瘍という.卵巣は解剖学的に骨盤腔の深部に位置するため,症状が生じにくいうえに,初期病変は触診や内診では検出しにくい.さらに,卵巣癌の進展過程は,ほかの腫瘍と異なり,早期に腹膜播種を生じる.このため,卵巣癌は進行癌になって初めて発見されることが多く,silent killerともよばれる.
▼疫学
卵巣腫瘍の頻度は女性の全生涯でみると5~7%とされる.欧米諸国では卵巣癌が婦人科癌のなかで最も死亡率が高く,日本においても死亡率は増加傾向にある.
▼分類
卵巣腫瘍は,①表層上皮性・間質性腫瘍,②性索間質性腫瘍,③胚細胞腫瘍,④その他に分類される(図7-40図).④には卵巣機能性囊胞や子宮内膜症性卵巣囊腫(チョコレート囊腫)なども含まれる.
①は全体の約70%を占め,漿液性,粘液性,類内膜,明細胞,Brenner(ブレンナー)腫瘍などが属する.②には,莢膜細胞腫,顆粒膜細胞腫,線維腫,Sertoli(セルトリ)細胞腫,間質細胞腫などが含まれる.エストロゲンなどのホルモン産生を認めることも多い.線維腫で胸腹水を伴う場合をMeigs(メイグズ)症候群という.③は全卵巣腫瘍の20%程度を占め,若年者に発生することが多く,成熟囊胞性奇形腫(囊胞内に皮脂,毛髪,骨などの石灰化がみられる),未熟奇形腫などが含まれる.④その他,腫瘍以外の機能性囊胞は,性成熟期の年齢層の女性に認められ,一過性であることが多い.子宮内膜症性卵巣囊腫や多囊胞性卵巣もよく遭遇する疾患である.
卵巣は他臓器腫瘍が転移しやすい臓器である.原発腫瘍としては消化器癌や乳癌の頻度が高い.胃癌の卵巣への転移でKrukenberg(クルーケンベルグ)腫瘍が生じる.
▼症状
卵巣腫瘍があっても,ほとんどは無症状である.時に,下腹部痛,下腹部圧迫感,性交痛,吐気,嘔吐などを認めることがある.卵
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