診療支援
治療

【8】発作性夜間ヘモグロビン尿症
paroxysmal nocturnal hemoglobinuria(PNH)
西村 純一
(大阪大学大学院招聘教授)

疾患を疑うポイント

●ヘモグロビン尿,溶血性貧血所見,血栓症,骨髄不全,繰り返す嚥下障害,腹痛などの平滑筋緊張症状のエピソードなどで疑う.

学びのポイント

●疾患名は発作性夜間ヘモグロビン尿症であるが,単なる溶血性貧血ではなく,造血幹細胞の異常による疾患である.

▼定義

‍ 発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は,PIGA遺伝子に後天的変異をもった造血幹細胞がクローン性に拡大した結果,補体による血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患である.再生不良性貧血(aplastic anemia:AA)を代表とする後天性骨髄不全疾患としばしば合併・相互移行する.血栓症は本邦例ではまれではあるが,PNHに特徴的な合併症である.またまれではあるが,急性白血病への移行もある.

▼病態

‍ PIGA遺伝子はグリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphosphatidylinositol:GPI)アンカー合成の初期段階に必要な酵素であり,PNH型血球ではGPIアンカー型蛋白(GPI-AP)の発現低下,あるいは欠損をきたす.補体制御因子であるCD55(decay-accelerating factor:DAF)やCD59(membrane inhibitor of reactive lysis:MIRL)もGPI-APに分類され,感染などを契機に補体が活性化すると,PNH型赤血球は補体の攻撃を受けて血管内溶血をきたす.PNHクローンの拡大機序については,AAでみられるような免疫学的攻撃のもと,GPI陰性のPNH型血球はこの攻撃から逃れることで相対的に増加し,さらに良性腫瘍的増殖能を付与するような付加的変異をきたし,クローン拡大につながるという多段階機序が提唱されている.

 血管内溶血とヘモグロビン尿,血栓症,造血不全を3大症状と

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