診療支援
治療

【15】二次性赤血球増多症
secondary erythrocytosis
川端 浩
(金沢医科大学特任教授・血液免疫内科学)

疾患を疑うポイント

●白血球数と血小板数が正常で,赤血球のみ増加している.

●低酸素血症をきたす疾患にしばしば合併する.

学びのポイント

●赤血球造血刺激ホルモンであるEPOの産生亢進により引き起こされる.

●うっ血性心不全,COPD,動静脈シャント,睡眠時無呼吸症候群,高度の肥満などによる低酸素血症が主な原因であるが,まれにEPO産生腫瘍によるものもある.

●真性多血症と異なり,血清EPO濃度は正常もしくは増加している.

●脱水による見かけ上の赤血球増加を除外する.

▼定義

‍ 赤血球増多症(erythrocytosis)は赤血球の異常な増加を指す症候名で,多血症(polycythemia)ともよばれる.赤血球増多症のうち,エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)の増加によるものを二次性赤血球増多症とよぶ.

▼病態

 原因にかかわらず,Ht値が上昇すると血液の粘稠度が高まり,血栓症のリスクが増加する.赤ら顔となり,頭痛やめまい,耳鳴り,目のかすみなどの症状がみられる.

腎組織の低酸素によるもの

 原因として多いのは腎組織の低酸素である.腎組織が低酸素状態になると低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)2αの発現が誘導されて,その下流にあるEPOの発現が増加する(図8-23).腎臓から分泌されたEPOは,骨髄の赤芽球系前駆細胞に作用してアポトーシスを抑制し,赤血球への分化を促す.低酸素状態における赤血球増多は組織の酸素需要を満たすための合理的反応といえる.こういった低酸素による赤血球増多症の基礎疾患としては,うっ血性心不全,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),動静脈シャント,睡眠時無呼吸症候群などが挙げられる.高度の肥満,酸素の薄い高地での居住や長期滞在,高地トレーニングも低酸

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