診療支援
治療

【7】偽性血小板減少
pseudothrombocytopenia
宮﨑 浩二
(北里大学教授・輸血・細胞移植学)

疾患を疑うポイント

●出血傾向の程度と自動血球計数器による血小板数の乖離がみられる.

学びのポイント

●見かけ上血小板が減少しているため,特発性血小板減少性紫斑病など,血小板低下をきたす血液疾患と誤診されることがある.臨床的には,血小板減少の鑑別診断として重要である.

●真の血小板減少症に合併する場合もあるため,注意が必要である.

▼定義

 実際の循環血小板数よりも自動血球計数器によってカウントされる血小板数が少なくなる「見かけ上」の血小板減少のことをいう.自動血球計数器は,血小板を大きさで判別しているため,血小板凝集塊や巨大血小板は,白血球と誤認される.その結果,血小板数が実際より低く報告される.

 採血困難によって組織液が混入したり,採血後の抗凝固薬との混和が不十分な場合に,血小板が活性化されたり,フィブリンが析出して,血小板が凝集することがある.この場合も,偽性血小板減少をきたすが,一般に偽性血小板減少といえば,採血手技の問題によるものは含まず,エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA)依存性偽性血小板減少を指す.

▼病態

 EDTA塩により血小板膜糖蛋白質上のエピトープが変化し,これに血中の免疫グロブリンが反応して血小板が凝集することがその本態と考えられているが,不明な点も多い.

 偽性血小板減少症例の血漿と健常人血液を反応させると血小板凝集が起こるが,Glanzmann(グランツマン)血小板無力症の血液では凝集が認められなかったことなどから,EDTA凝集の原因となる抗体の認識部位は,多くの症例で血小板膜糖蛋白質GPⅡb/Ⅲa複合体上にあることが示唆される.また,血小板衛星現象は,その抗体が白血球上のFcγ受容体と結合することで白血球と血小板をつないで引き起こされると考えられる.ただし,健常人でもEDTA凝集は認められるため,この

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